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『ばけばけ』錦織友一(吉沢亮)モデル|西田千太郎

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朝ドラ『ばけばけ』で、吉沢亮さん演じる錦織友一の実在モデル・西田千太郎さんについてご紹介いたします。

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『ばけばけ』錦織友一モデル|西田千太郎とは

朝ドラ『ばけばけ』錦織友一は、NHK公式サイトで次のように紹介されています。

松江随一の秀才で、「大磐石(だいばんじゃく)」の異名を持つ。松江中学で英語教師を務め、外国人教師として松江にやってきたヘブンを公私でサポートする。トキとも奇妙な縁で知り合い、深く関わっていく。

モデルとなった西田千太郎さんとは、どのような人物だったのでしょうか。

西田千太郎プロフィール

西田千太郎
(1862年11月9日〜1897年3月15日)
小泉八雲の勤務校の教頭にして親友
『ばけばけ』錦織友一のモデル

【出身】島根県松江市雑賀町
【学歴】 藩立修道館
→雑賀小学校
→教員伝習校変則中学(松江中学校)
→松江中学校退学

家族

西田半兵衛 松江藩士
西田精(きよし) 東京帝国大学工科大学助教授
九州帝国大学工科大学教授
安食クラ 1884年に結婚
長女 西田キン 1885年生まれ
長男 西田哲二 1888年生まれ
東京帝国大学工学部卒業
30才で早逝
次男 西田敬三 1891年生まれ
東京大学農学部水産学科卒業
農商務省水産局、同水産講習所
→1922年朝鮮総督府水産試験場技手・場長
→1945年帰国
広島大学水畜産学部教授・学部長
三男 兵士郎

年譜

1862年 0歳 島根県松江市雑賀町に生まれる
1880年 18歳 松江中学校を退学
授業手伝いになる
1884年 21歳 安食クラと結婚
1885年 22~23歳 長女キン誕生
松江中学校退職
1886年 23歳 中等教員免許試験合格
姫路中学校教員に
1887年 24歳 坂出私立済々学館教長に
1888年 25歳 長男・哲二誕生
島根県尋常中学校教諭に
1889年 26歳 島根県尋常中学校教頭心得
1890年 27歳 小泉八雲と出会い、同校講師に迎える
1891年 28歳 小泉八雲夫妻の媒酌人?
島根県尋常中学校校長心得に
次男・敬三誕生
1894年 31歳 島根県私立教育会から功績賞を受ける
三男・兵士郎誕生
1895年 32歳 日本弘道会松江支会長就任
1897年 34歳 結核で病没
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『ばけばけ』錦織友一モデル|西田千太郎の生涯

(出典:小泉八雲記念館公式サイト)

西田千太郎さんの生涯は、36年と短く、小泉八雲さんと同僚だった期間も八雲さんが熊本へ行くまでの1年と2ヶ月ほど。

ですが、小泉八雲夫妻にとって西田千太郎さんとの出会いは、とても大きいものでした。

教師になった秀才

1862年、松江藩(現島根県)の足軽(下級武士)出身の西田家長男として生を受けた西田千太郎さん。

西田家は、小泉セツさんの実の母・小泉チエさんの実家(塩見家)の家来筋だったと言われています。

1880年(17歳)
常に学年トップの秀才だった西田千太郎さんは、松江中学を退学し、母校で生徒に教える授業手伝となりますが、教員免許は持っていませんでした。

(中学を退学した事情については、わかり次第追記いたします)

1884年(21歳)結婚。

西田千太郎は松江中学を中途退学、一時東京に遊学したこともあるが、母校に教鞭を執る傍ら、独学自修によって心理、教育など数課目の検定試験に合格し、一、二の中学に教えた後再び松江中学の教頭となって帰ったと言われる。
(引用『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』田部隆次)

2年間の苦学の末、
東京で教員免許を取ると、兵庫県姫路の姫路中学校、香川県坂出の済々学館に赴任した後、
1888年(25歳)
島根県尋常中学校の教諭となっています。

教頭となった人格者

頭脳明晰だけではなく、親切で清廉な西田千太郎さんは、「人格者」として多くの人に評価されていました。

1889年(26歳)
教頭となると、学校の再建に着手し、教授法の改善、経費の削減などに努めます。

西田は若くして結核を病み、ハーンの在松中も含め闘病の生涯でした。34歳の短い生涯でしたが、ハーンだけでなく教え子をはじめ松江市民に鮮烈な印象を与えました。教え子が語っています。「先生は我松江市の生める秀才の一人にて、頭脳極めて明晰且記憶力に富み…朋友知人皆これに感化せられ、氏に対し不平不満の言辞を漏せしことも予は未だ嘗て耳にせざりしなり」(和田玉一)、「実に明晰なる頭脳の持ち主であった。…先生の教室には粛然たる気が充ちてゐたことを想見する」(落合貞三郎)。
(引用:小泉八雲記念館公式サイト)

生徒から見ても尊敬に値する人気の教育者だったことがわかりますね。

小泉八雲との出会い

1890年(27歳)
当時の籠手田安定島根県知事(江藤安宗モデル)が高待遇で小泉八雲さんを松江に迎え入れました。

教頭の西田千太郎さんは、職務上はもちろん、資料収集や取材活動への協力を惜しまず、私生活の世話を焼き、八雲さんが不自由なく過ごせるよう尽力しました。

・出雲大社昇殿
1890年9月上旬
西田千太郎さんが宮司(81代國造)・千家尊紀さんに小泉八雲さんを紹介し、西洋人として初めて出雲大社に昇殿。
・講演の通訳
1890年10月
「教育における想像力の価値」という八雲さんの講演を、西田千太郎さんの通訳で開催。

八雲さんは、親切で人間味あふれるこの好人物のことが大好きになり、2人は親友と言える間柄になりました。

『思ひ出の記』には、小泉八雲さんと西田千太郎さんの関係について、次のような記述が見られます。

中学の教頭の西田と申す方には大層お世話になりました。二人は互いに好き合って非常に親密になりました。ヘルンは西田さんを全く信用してほめていました。「利口と、親切と、よく事を知る、少しも卑怯者の心ありません。私の悪い事、皆いってくれます、本当の男の心、お世辞ありません、と可愛らしいの男です」。
(引用『思ひ出の記』小泉節子)

また、小泉八雲セツさん夫妻の長男一雄さんも

松江聖人と噂されており、父が最も信頼した日本人中第一の友人である。父の日本研究に多大な援助を与えた人。日本の人情風俗においても懇切丁寧に説明を施した。
(引用『父小泉八雲』小泉一雄)

と記されています。

小泉八雲とセツの出会い

1890年年末または1891年1月(28歳)
セツさんが小泉八雲さんの身の回りの世話をするため住み込みで働き始めると、英語の堪能な西田千太郎さんは、言葉が通じない2人の会話を取り持つ役割を果たします。

小泉八雲さんと小泉セツさんの出会いについてですが、小泉八雲記念館館長で小泉八雲さんセツさんひ孫の小泉凡さんは

西田千太郎教頭の仲介で、セツが世話係としてハーンのもとへ行きます。
(引用『思ひ出の記』小泉節子)

と書かれています。

ただ、小泉八雲さん自身は出会いについてまったく語っておらず、セツさんが西田千太郎さんを仲介者としたのは表向きで、冨田旅館の女将冨田ツネさん、または旅館の女中お信さんが紹介したという説もあります。

小泉八雲とセツの媒酌人?

1891年2月上旬(28歳)
小泉八雲さんセツさん結婚(事実婚)。

1891年夏
西田千太郎さんは、小泉八雲さんを連れて出雲大社近くの稲佐の浜に遊びに行き、八雲さんから呼ばれたセツさんも後から合流しています。
(稲佐の浜は、『古事記』の国譲りの神話の舞台になった場所で、10月には全国の神々が集まると言われています。)

千家尊紀さんに招かれ出雲大社の豊年踊りを見物した3人。

小泉八雲さん没時には、「The Student」紙がそのことについて触れ、「出雲大神宮で結婚を挙行した」と書いています。

結婚式的な意味合いがあったのだとすれば、西田千太郎さんが「媒酌人」と考えるのが自然かもしれません。
(小泉セツさんも外務省の問いにそう答えておられます。)

西田さんの同僚で義弟の後藤蔵四郎さんは
「只言語相通ぜぬ此二人に意志相通する様よく親切を尽くしただけであった」
と証言されていますが、何にせよ、密接に関わっておられたということに間違いなさそうです。

病気

西田千太郎さんは、小泉八雲さんが松江を去ってからもずっと文通を続けていました。

八雲さんは熊本で書いた著書『東の国から』を
「出雲時代のなつかしい思い出に、西田千太郎へ」
と西田千太郎さんに献呈されています。

若い頃からずっと病気で苦しんでいた西田千太郎さん。

八雲さんは、離れていても
「あのような善い人です、いかに神様悪いですねー私立腹」
と、いつも西田さんの体調を心配されていました。

早すぎる死

1897年(34歳)3月
西田千太郎さんは、多くの方に惜しまれながら結核で亡くなります。
これは、小泉八雲さんが帰化し、神戸から東京へ移住した翌年のことでした。

亡くなった後までも「今日途中で、西田さんの後ろ姿見ました、私の車急がせました、あの人、西田さんそっくりでした」などと話したことがあります。似ていたのでなつかしかったと言っていました。早稲田大学に参りました時、高田さんが、どこか西田さんに似ているといって大層喜んでいました。
(引用『思ひ出の記』小泉節子)

その後も、八雲さんはずっと西田千太郎さんの面影が忘れられなかったということです。

【参考文献】
『八雲の妻 小泉セツの生涯』長谷川洋二:潮出版社
『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』田部隆次:中央公論社
『面白すぎて誰かに話したくなる小泉八雲とセツ』伊藤賀一:リベラル社
『妖怪に焦がれた男 小泉八雲大解剖』小泉凡監修:宝島社
『父小泉八雲』小泉一雄:小山書店

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