朝ドラ『ばけばけ』で、池脇千鶴さん演じる松野フミの実在モデル稲垣トミさんについてご紹介いたします。
『ばけばけ』松野フミモデル|稲垣トミとは
朝ドラ『ばけばけ』で池脇千鶴さん扮する松野フミ(まつのふみ)は、NHK公式サイトで次のように紹介されています。
トキの母。 出雲大社の上官の家で育ち、出雲の神々の物語や生霊・死霊の話、目に見えないモノの話に詳しく、トキにもよくお話を聞かせてあげる。 優しくてしっかり者。トキの幸せを誰よりも願っている。
(引用:NHKの公式サイト)
実際の小泉セツさんの母・稲垣トミさんはどのような人物だったのでしょうか。
稲垣トミプロフィール
稲垣トミ
(1834年〜1912年8月)
稲垣トミさんは、小泉八雲さんの妻である小泉セツさんの養母。
セツさんの養父・稲垣金十郎さんの2歳年下の妻です。
稲垣トミ家族一覧
実父 | 原忠兵衛 | 松江士族 |
養父 | 高浜大炊 | 出雲大社上官 |
養母 | 高浜ツタ | 大炊の妻でセツの母 稲垣保仙の姉 |
義父 | 稲垣保仙 | 金十郎の父 6代目万右衛門 |
夫 | 稲垣金十郎 | 松江士族 善良で詐欺被害 |
娘(養女) | 小泉セツ | 誕生7日で小泉家から養女に |
娘婿 | 前田為二 | 鳥取士族の次男 セツの最初の夫 |
娘の夫 | 小泉八雲 (ラフカディオ・ハーン) |
セツの再婚相手 |
孫(養子) | 岩垣巌 | セツと八雲の次男 トミの養子として 稲垣家後継になるが |
孫たち | 小泉一雄 小泉清 小泉寿々子 |
セツと八雲の子どもたち |
稲垣トミの家柄(高浜家)
松江城下・北堀町に住む原忠兵衛(家禄100石)の娘として生を受け、幼少の時に杵築にある高浜家の養女となり、成人するまで高浜家で過ごします。
養父は出雲大社上官の高浜大炊さん、
養母はツタさん。
姉妹はヨシさん。
出雲大社の社家で、代々上官(高級神官)を務める高浜家は、出雲大社宮司の千家家と同じく國造職(宮司職)を分け合った北島家(男爵)をルーツに持つ家柄です。
小泉セツさんも、時折、杵築の真名井にある「釜の上官」と呼ばれた名家・高浜家に泊まりに行っていたとお話しされています。
稲垣家に嫁入り
嫁入りした稲垣家は、当主は代々「万右衛門」を名乗る家禄100石の「並士」の家柄でした。
当主で義父となる稲垣保仙(6代目万右衛門)さん、2歳上の夫の稲垣金十郎さんと暮らします。
(トミさんの養母高浜ツタさんは、稲垣家の5代目万右衛門さんの長女で、稲垣保仙さんの姉にあたります)
トミさんと金十郎さんは子宝に恵まれなかったため、縁戚の小泉家の次女・セツさんを養女として迎え入れました。
その後、夫が事業資金を騙し取られ、屋敷を明け渡しただけでなく、無実の罪まで着せられてからは、借金を返すために必死で働きました。
『ばけばけ』松野フミ(池脇千鶴)モデル|稲垣トミの人柄
語り部
出雲大社上官を務める家に育ったトミさんは、神々の話にとてもくわしかったそうです。
そして、出雲の神々の物語、生き霊や死霊のお話、祈祷、神楽について、さらに、タヌキやキツネ、ムジナが化けて人を騙す説話をよくセツさんに物語って聞かせていたそうです。
働き者
妻のトミは二歳年下で、無学であったが、何事につけても器用で骨身を惜しまず立ち働く、実直で愛情豊かな女であった。
(引用『八雲の妻 小泉セツの生涯』長谷川洋二)
稲垣家の男性陣には時代の変化に適応するのが難しかったため、実直で真面目に働くトミさんが縫い物などを請け負い、セツさんとともに生計を担っていました。
無私
トミさんは孫の一雄さんをおんぶして神社の石段で転び、孫をかばって自身は頬に大きな傷を負ったことがあります。
小泉八雲さんは、この「無私」の精神の尊さを、遺稿『おばあさんの話』に典型的な日本女性として書いています。
『ばけばけ』松野フミ(池脇千鶴)モデル|稲垣トミまとめ
幼くして、出雲大社の高級神官の家に養女に入った稲垣トミさん。
神話や民話、昔話などをセツさんに語って聞かせたことで、セツさんの語り部としての要素に影響を与えたと考えられています。
また、働き者で無私の精神を持つトミさんは、同居していた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)さんの持つ日本女性のイメージを、良い方向に強化していったと思われます。
夫・稲垣金十郎さんや義父・稲垣保仙(6代目万右衛門)さんと共に、小泉セツさん小泉八雲さんと同居した後は、孫たちと賑やかに暮らしました。
亡くなったのは、1912年8月。
稲垣トミさん78歳。
時代は、明治が終わり、大正に入ったばかりでした。