朝ドラ『ばけばけ』で、岡部たかしさん演じる松野司之介の実在モデル稲垣金十郎さんについてご紹介いたします。
『ばけばけ』松野司之介モデル|稲垣金十郎とは
朝ドラ『ばけばけ』で岡部たかしさん扮する松野司之介(まつのつかさのすけ)は、NHK公式サイトで次のように紹介されています。
トキの父。 松江藩の上級武士だったが、時代が明治になると収入がなくなり、苦しい貧乏生活に。 愛する家族のために不器用ながら奮闘する。 トキに「かっこいい」と言われたい!
(引用:NHK公式サイト)
実際の小泉セツさんの父・稲垣金十郎さんはどのような人物だったのでしょうか。
稲垣金十郎プロフィール
稲垣金十郎(いながききんじゅうろう)
(1832年〜1900年11月19日)
小泉家の縁戚で、小泉セツさんの養父。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)さんの義理の父。
家柄
【稲垣家】
・松江城下に屋敷を持つ
・「並士」の家柄で明治時代は士族
・家禄100石
・当主は代々「万右衛門」を名乗る
・小泉家と縁戚
家族一覧
父 | 稲垣保仙 | 6代目 万右衛門 |
母 | 不明 | (探せませんでした) |
妻 | 稲垣トミ | 高浜家の出 実直で働き者 愛情深い |
娘(養女) | 小泉セツ | 誕生7日で小泉家から養女に |
娘婿 | 前田為二 | 鳥取士族の次男 セツの最初の夫 |
娘の夫 | 小泉八雲 (ラフカディオ・ハーン) |
セツの再婚相手 |
孫(養子) | 岩垣巌 | セツと八雲の次男 トミさんの養子 稲垣家後継になるが |
孫たち | 小泉一雄 小泉清 小泉寿々子 |
セツと八雲の子どもたち |
『ばけばけ』松野司之介モデル|稲垣金十郎の人柄
緊迫する京都で、警備の任に就いた経験があります。
好人物
子宝に恵まれずセツさんを養子にした金十郎さんは
いたって気のいい善良な侍であった。
王政復古の大政変を前にして、京都が緊迫した空気に包まれていた時に、京都警備の任にありながら、連日のように烏丸通りに家来を遣って、好物の菓子を買わせたり、後々まで、鳥羽・伏見の戦いをおもしろおかしく子供たちに語り聞かせるといった、好人物だったものである。
(引用『八雲の妻 小泉セツの生涯』長谷川洋二)
と、評されています。
お話が上手で、明るく、子ども好きな一面が垣間見えますね。
詐欺被害
ですが、1875年に士族の家禄奉還の際に6年分の家禄を一括して受け取り、事業を始めようとしてから、家が零落していきます。
あまりに善良であり、すぐにも狡猾で薄情な手合の詐欺にかかった。そして稲垣家もまた、家禄奉還による資金を失い、祖母橋脇の先祖代々の屋敷を明け渡さなければならないことになった。
(引用『八雲の妻 小泉セツの生涯』長谷川洋二)
翌年、小泉セツさん8歳の時、一家は、城の近くの内中原町から、四十間堀を西に越えた城下町の外れの中原町に転居しました。
セツさんの長男・一雄さんは
母の養父雲峰院殿は稍覇気に乏しい善良な人であった。詐欺にかゝった上に相手が悪辣極る奴で逆に無実の罪を着せられ、数年後には晴天白日の身とはなったものゝ、裁判費用で財産を悉く無くし、日常の生活費にも事欠くの有様となった。
(引用:『父小泉八雲』小泉一雄)
と記しています。
事業資金を騙し取られ、屋敷を明け渡しただけでなく、無実の罪まで着せられてしまった金十郎さん。
善良ゆえに詐欺被害に遭ってしまいました。
稼ぐ力
セツさんに迎えた婿の前田為二さんから見れば、金十郎さんは家計の足しにならない人物でした。
働き手として当てにしていた婿にも逃げられますが、
金十郎さんは、セツさんが2度目の結婚をすると、小泉八雲さんの赴任地で同居し、穏やかに暮らします。
1900年に胃潰瘍で亡くなりました。
小泉セツさんの『思ひ出の記』巻末年譜によると59歳。
(一般的に言われている1832年生まれなら68歳)
これはセツさんと八雲さんの第3子・小泉清さんが生まれた翌年のことでした。