2025年大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』
第47話「饅頭こわい」
あらすじを紹介いたします。
お楽しみいただけますと幸いです。
※ネタバレ含みます
大河ドラマ『べらぼう』第47話あらすじ

大崎の死
曽我祭当日。
大崎が遺体で見つかり、松平定信が待機する浄瑠璃小屋でも毒饅頭を食して死んだ者が多数。
毒饅頭は関係者にだけ配られており、仇討ち計画が治済にバレていたことに気づく定信。
目には目を、毒饅頭には毒饅頭を
その累が定信に協力した自分にも及ぶだろうと危惧する蔦重は、一時的に店を閉めると宣言し、奉公人たちから不満の声が上がります。
そんななか、毒饅頭を食べ、一命を取り留めたみの吉が言いました。

うっかり毒饅頭食いませんかねえ、そいつ。
仕込んだ奴がうっかり食ってポックリってなあ、面白かねえですか。
上様の務め
江戸城で一橋治済にいたぶられ、頭に血が上っている松平定信のもとを蔦重が訪ねます。

ちょいと思いついたのでございますが、一つ、傀儡好きに毒饅頭を食わせるというのはいかがにございましょう。毒饅頭の仇は毒饅頭で取るってなあ、なかなかトンチが利いておりますかとね、こう、うっかりパクッと食わせて。
それは、将軍・徳川家斉を巻き込んで治済を捕らえるという策でした。

上様ってなあこの世に泰平をもたらすためにいらっしゃる。だったら泰平を乱す輩がいんなら、毒饅頭を食らわすのが上様の務め、分だ。私らには分を分をっておっしゃいながら、天下を治める公方様が己の分には知らん顔ってなぁ、こりゃ道理が通らねえってもんじゃございませんかい?
大崎の遺書
さっそく定信は、御三卿の清水重好のもとを訪ね、協力を仰ぎます。清水重好は、さきの将軍徳川家治の最期の様子を定信に話しました。
曽我祭の日、大崎が物言いたげに手渡した代金の紙包みを思い出す蔦重。柴野栗山は、その紙を家斉に見せました。
紙には女性の文字が書かれています。
「田安の治察様、家基様、さきの公方様、右近将監様、名も知らぬあまたの民、女子供、関わり方は様々ですが…全てはお父上様のお指図にございました。」
その瞬間、家斉の脳裏に幼き日に見た家治の

悪いのは父だ、そなたの父だ!
という最期の言葉が蘇ります。
「ご無礼にはございますが、上様こそ最たる傀儡にございます。上様どうかお父親の悪行をお止めくださいませ。あの方を止められるのは、この世にただお一人、上様しかいらっしゃいませぬ。大崎」
懐かしい乳母の字に、家斉、落涙。
毒入り?饅頭
清水邸の離れの茶室。
客は、徳川家斉とその父・一橋治済。
茶菓子は饅頭。
手をつけない治済の隣で、饅頭を食べ、茶を飲みほし、倒れる息子。

お、おのれ!!
立ち上がろうとしたその時、一橋治済の視界が暗転しました。
島流し
蔦重の作戦に見事はまった一橋治済は、松平定信や長谷川平蔵に捕らえられ、秘密裏に阿波(徳島)の孤島へ送られました。
松平定信は、世間に知られることなく、一橋治済への復讐を遂げることができたのです。
その後、蔦屋は店を再開し、定信は国元へ帰り、二度と公儀の中心に戻ってくることはありませんでした。
大河ドラマ『べらぼう』第47話 あらすじの向こう側
蔦重の考えた将軍・徳川家斉を巻き込んでの罠。
それが47話副題「饅頭こわい」に込められているようです。
「饅頭こわい」についてご紹介いたします。
『五雑組』「畏饅頭」
元は、明国の謝肇淛の『五雑組』「畏饅頭」という漢文です。
(貧しい学生がいました)
欲食饅頭。
(饅頭を食べたいと思っています)
計無従得。
(想像してみても、得られません)
一日見市肆有列而鬻者。
(ある日、市場の店に饅頭を並べて売っている者を見ました)
輒大叫仆地。
(すぐ大声で叫び、地面に倒れます)
主人驚問。
(主人は驚いて尋ねます)
曰、「吾畏饅頭。」
(曰く「私は饅頭が怖いです」)
主人曰、「安有是。」
(主人曰く「どうしてこんなことがあるのか、いやない。」)
乃設饅頭百枚置空室中、
(そして饅頭100個を用意して空き部屋に置き)
閉之伺於外寂不聞声。
(書生を閉じ込め、外から様子を聞くと、ひっそり静かで音は聞こえません)
穴壁窺之、則食過半矣。
(壁に穴をあけて中の様子を覗ってみると、半分ほど食べてしまっていました)
亟開門詰其故。
(すぐに門を開けてその理由を問い詰めます)
曰、「吾今日見此、忽自不畏。」
(曰く「私は今日これを見たら、たちどころに自然と怖くなくなっていた。」)
主人知其詐、怒叱曰、「若尚有畏乎。」
(主人がその嘘を知り、怒って叱り言うには「お前にはまだ怖いものがあるのか」)
曰、「更畏蠟茶両椀爾。」
(曰く「次は、蠟茶二杯が怖いだけ。」)
本当は好きなものを「嫌い」「怖い」と言い、相手の意地悪な気持ちをかき立てて罠にはめるという話ですね。
「饅頭こわい」
「饅頭こわい」は、落語の演目としても知られています。
「畏饅頭」を元に作られており、筋はほぼ同じで登場人物が違います。
大勢の男たちが集まって、それぞれが「自分の一番怖いもの」について話します。ヘビ、ムカデ、火事、地震など、様々な怖いものが挙げられます。
皆が怖がるなか、一人の男だけは涼しい顔をしています。他の男達が「お前には怖いものはないのか?」と尋ねると、男は「私には怖いものが一つだけある」と答えます。
皆が固唾を飲んで「それは何か?」と聞いたところ、「まんじゅうがこわい」と答える男。
皆は「そんなバカな」と笑いながらも、男を驚かせてやろうと、まんじゅうを大量に買い込んできて、男の部屋に投げ込んだり、目の前に差し出したり。
男は「うわー、怖い怖い!」と言いながら、投げ込まれたまんじゅうや差し出されたまんじゅうを次々と食べ始めます。そして、まんじゅうを平らげた後、こう言いました。
「あー怖かった。しかし、もう一つ怖いものがある。今度はお茶漬けが怖い」
怖がるふりをして、まんじゅうをたくさん食べる男と、まんじゅうを買い与えてしまう周りの人々の滑稽さを描いた古典落語として有名ですね。


