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『虎に翼』モン・パパの歌詞と寅子が歌う理由

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このページでは朝ドラ『虎に翼』にたびたび登場する歌「モン・パパ」の歌詞(3種類)のご紹介と

どうして寅子が「モン・パパ」を歌うのか、その理由にせまります。

お役に立ていただけましたら幸いです。

 

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「モン・パパ」の歌詞

「モン・パパ」はフランス生まれのシャンソンで、それを宝塚歌劇団や榎本健一さんらがカバーしています。

まず、フランス語の歌詞、宝塚歌劇団の歌詞、榎本健一さんの歌詞をそれぞれご紹介します。

フランス喜劇映画の劇中歌「モン・パパ」

戦前の日本ではフランスのシャンソン歌手が人気でした。

名前はジョルジュ・ミルトン(Georges Milton)。

ミルトンの主演する喜劇「巴里っ子(Le roi des Resquilleurs=タダ見の王様)」は日本でも公開され、人気となりました。

ストーリーはこんな感じ。

いつもスポーツの試合を「タダ見」するミルトン演じるブーブールが、デートで選手席に座ってしまい、試合に出場。
勝利してフランスの英雄となり彼女と結ばれるというサクセスストーリー。

この映画の劇中歌こそ「モン・パパ」です。

「セプールモンパパ(C’est pour mom Papa私のパパのために)」というタイトルでした。

歌詞も違っています。

1)
J’ai des parents qui ne sont pas du tout assortis

私の両親は、全くお似合いじゃない
Papa est petit et très mal bâti
パパはちっちゃくて、とてもカッコ悪い
Tandis que maman est grande, jolie et fait du sport
ところがママは大きくて、美人でスポーツ万能
Mon père avec ma mère a toujours tort
私の父は私の母といると、ヘマばかり
Elle commande à chaque coup des robes de chez Patou
彼女がいつもドレスを注文する店は、高級店「パトゥー」
Mais elle habille papa au “décrochez-moi ça”.
だけど、彼女がパパに着せるブランドは、「これを脱がせて」
L’habit qui n’va pas c’est pour mon papa
イケてない服は、私のパパのもの
Les plus beaux vêtements c’est pour ma maman
一番美しい服は、私のママのもの
Le livreur c’est tout l’ temps pour ma mère
お届けものは、いつも私の母あて
Les factures c’est tout l’temps pour mon père
請求書は、いつも私の父あて
Les vieux pyjamas c’est pour mon papa
着古したパジャマは、それは私のパパのもの
Les dessous troublants c’est pour ma maman
悩ましい下着は、それは私のママのもの
Ses chaussures sont coquettes
彼女の靴は、可愛い。
Mais les plus sales chaussettes
だけど、一番汚いくつ下で、
Aux trous grands comme ça, c’est pour mon papa.
あんなに大きな穴があいてるのは、それは私のパパのもの

2)
C’est à maman qu’les gens font toujours de beaux cadeaux
ママには、人々がいつも素敵なプレゼントをくれる
Papa, ce nigaud, ne reçoit qu’la peau
パパは、この単純さんは、その包み紙をもらって喜んでる
Tous les ans, l’jour de sa fête, maman se fait offrir
毎年、彼女の誕生日に、ママはプレゼントをもらいます、
Des choses de prix qui font toujours plaisir
いつも喜ばれる、高価なものを。
Elle a des objets d’art, des sacs en peau d’lézard
彼女は美術品や、トカゲ皮のバッグを持っています
Mais papa chaque fois, faut voir ce qu’il reçoit.
でも、パパは毎回、彼が何をもらったのか見なければなりません。
Le pot d’bégonias c’est pour mon papa
ベゴニアの鉢は、私のパパのためのものです
Mais les gros diamants c’est pour ma maman
でも大きなダイヤモンドは、それは私のママのためのもの
Le plus beau c’est tout l’temps pour ma mère
一番良いもの、それはいつも私の母のもの
Le plus moche c’est tout l’temps pour mon père
一番良くないもの、それはいつも私の父のもの
Le p’tit agenda c’est pour mon papa
その小さな日記は、それは私のパパのものです
Les bonbons fondants c’est pour ma maman
とろけるキャンディは、それは私のママのもの
Elle invite tous les gens qui lui font des présents
彼女は贈り物をくれるすべての人を、招待します
Mais les frais du r’pas c’est pour mon papa.
でも、払う食費は、それは私のパパの担当3)
Maman chaqu’ matin fait sa p’tite ballade en auto
ママは毎朝のちょっとしたお出かけは、車に乗ります
Papa s’lève plus tôt et s’tape le métro
パパはもっと早起きして、地下鉄に乗ります
Maman, au five o’ clock boit l’thé avec ses amies
ママは5時に友人たちと、お茶を飲みます
Elle n’ revient pas avant huit heures et demie
彼女は8時半までは、戻って来ません
Papa ne rouspète pas, c’est lui qui fait l’repas
パパは文句は言いません、食事を作るのは、それは彼なのですが
Il r’çoit les livraisons et balaie la maison.
彼は配達物を受け取って、家を掃除します
Faire les oeufs sur l’plat c’est pour mon papa
目玉焼きを作るのは、それは私のパパの役目
Faire du boniment c’est pour ma maman
その出来栄えを、自慢するのは、それは私のママの役目
Le tango c’est tout l’temps pour ma mère
タンゴを踊るのは、いつも私のママ
Le balai c’est tout l’temps pour mon père
掃除をするのは、それはいつも私のパパ
Faire la soupe au chat c’est pour mon papa
猫のためのスープを作るのは、それは私のパパ
S’payer de l’agrément c’est pour ma maman
楽しみのためにお金を使うのは、それは私のママ
Quand elle flirte un peu trop avec les gigolos
彼女がジゴロたちと、ちょっとイチャイチャしすぎているとき
Faire pisser Mirza, c’est pour mon papa.
子供のミルザちゃんにおしっこをさせるのは、それは私のパパ作詞:Rene Pujol / Charles-L. Pothier
作曲:Casimir Oberfeld
歌唱:Georges Milton

「喜劇」らしい歌詞という印象ですね!

宝塚歌劇団レビューの劇中歌「モン・パパ」

この歌は、当時シャンソンを日本に広める役割を担っていた宝塚歌劇団の目に止まります。
すでに「モン・パリ(Mon Paris)」や「すみれの花咲く頃(Quand refleuriront les lilas blanc)」などのシャンソンを取り上げ、流行らせていた宝塚歌劇団。

昭和6年にレビュー「ローズ・パリ」を上演します。

フランスの田舎で数学教師をしているポールは歌手を夢見て、恋人フロッシーを置いてパリに行くのですが、心変わりをしてフロッシーに振られ落ちぶれます。逆にフロッシーはパリでスター歌手になり、2人は再会してハッピーエンド。

このレビューにさきほどのミルトンの楽曲「C’est pour mom Papa」が歌われています。
日本語のタイトルは、「モン・パパ」。

1)
うちのパパとうちのママと並んだとき
大きくて きれいなはママ
うちのパパと うちのママと話すとき
大きな声で怒鳴るは いつもママ
小さな声で謝るのは いつもパパ
うちのパパ もっさり服
うちのママ 流行の服
呉服屋の品物 いつもママ
その代り 勘定書き いつもパパ
古い時計 それはパパ
大きいダイヤモンド それはママ
パパの大きなものは一つ
靴下の破れ穴
合唱)
うちのパパ もっさり服
うちのママ 流行の服
呉服屋の品物 いつもママ
その代り 勘定書き いつもパパ
古い時計 それはパパ
大きいダイヤモンド それはママ
パパの大きなものは一つ
靴下の破れ穴2)
うちのパパとうちのママと並んだとき
大きくて きれいなはママ
うちのパパと うちのママと話すとき
大きな声で怒鳴るは いつもママ
小さな声で謝るのは いつもパパ
うちのパパ 会社へ行く
うちのママ ダンスへ行く
タキシーで行くのは いつもママ
テクシーで行くのは いつもパパ
辛いタバコ それはパパ
甘いカクテル それはママ
パパの一番好きな時は
うちのママのゐない時
合唱)
うちのパパ 会社へ行く
うちのママ ダンスへ行く
タキシーで行くのは いつもママ
テクシーで行くのは いつもパパ
辛いタバコ それはパパ
甘いカクテル それはママ
パパの一番好きな時は
うちのママのゐない時白井鐵造(しらいてつぞう)訳詞

劇中では大町かな子が歌い、レコードは娘役スター・三浦時子が吹き込んでいます。

寅子のモデル・三淵嘉子さんは宝塚ファンであったので、宝塚バージョンもご存知だったかと思います。

エノケンの大ヒットレコード「モン・パパ」

さて、寅子が歌っているのは、この後に発売された喜劇役者の”エノケン”こと榎本健一、流行歌手の二村定一のデュエットの方です。

二人が交代で歌っています。

1)
二村)うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なはママ
うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴るは、いつもママ
榎本)いやな声で謝るのは、いつもパパ
二村)うちのパパ 毎晩遅い
榎本)うちのママ ヒステリー
二村)暴れて怒鳴るは いつもママ
榎本)はげ頭下げるは いつもパパ
二村)でたらめ言う それはパパ
榎本)胸ぐらを取る
二村)それはママ
二村、榎本)パパの身体は 揺れる揺れる クルクルと回される2)
榎本)うちのパパとうちのママと並んだ時、大きくて立派なママ
うちのパパとうちのママと喧嘩して、大きな声で怒鳴るは、いつもママ
二村)小さな声で謝るのは、いつもパパ
榎本)うちのパパ コブが出る
二村)うちのママ ツノが出る
榎本)後から笑うのは いつもママ
二村)メソメソ泣くのは いつもパパ
榎本)あ のんきな大将 それはパパ
二村)ヒスの親玉 それはママ
榎本、二村)パパの嬉しそうな時は ニコニコとえびす顔(訳詞者不詳)

 

クルクルとまわされちゃっているパパ!
歌詞の過激さが増しながらもコメディアンである榎本健一の力で、当時は楽しいホームソングとして大ヒットしました。

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寅子が「モン・パパ」を歌う理由

寅子はなぜことあるごとに歌うのでしょうか?
(完全に私見です)

どんな場面で登場しているかといいますと

①兄・直道と花江の結婚式で、準備に動いた女性陣が「すんっ」としていることに違和感を感じて怒りの「モン・パパ」を歌い上げた。

②仲間の崔香淑が夢を諦め帰国を余儀なくされた時に、悔しい気持ちで「モン・パパ」を歌った。

③30話で初の女性弁護士誕生ともてはやされた時、怒りの「モン・パパ」が頭の中を駆け巡り、
「優秀な君たちを特別に仲間に入れてあげましょう」という匂いプンプンの記者会見でついに
「私達、すごく怒っているんです!」
と発言した。

 

振り返ってみますと、そこには怒りや悔しさでいっぱいになった時に歌ったり脳裏を駆け巡っていたりしていることがわかります。

当時は、男尊女卑の社会。
女性と男性の立場の逆転を歌った「モン・パパ」は、いわゆる「喜劇」のなかでしか起こり得ないユーモアだからこそ受け入れられたと考えられます。

強い女性を揶揄し、弱い男性をバカにする歌詞。
深読みすれば
「こんな夫婦は情けない」「こんな夫婦にはなりたくない」という牽制にも思えます。

寅子の周りには、理不尽な目に合わされる女性がたくさん登場します。

それがリアル。

男尊女卑の社会に対して、胸ぐらを掴んでクルクル回したい。

寅子は社会に対するやり場のない怒りや悔しさを「モン・パパ」を歌うことで表しているのかもしれませんね。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。

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