作家の命日は、業績や代表作、ゆかりの風物にちなんで「文学忌(ぶんがくき)」と特別な名前で呼ばれることがあります。
愛した花や季節の移ろい、ペンネームなど、様々な呼び名で故人を偲びます。
各作家の文学忌、由来、享年、死因をご紹介いたします。
ご一読いただければ幸いです。
文学忌ブラッサム』関係(宇野千代、尾崎士郎、梶井基次郎、芥川龍之介、川端康成)

まず、朝ドラ『ブラッサム』にゆかりのある作家の文学碑をご紹介いたします。
| 作家名 | 文学忌 | 命日 | 死因 | 享年 | 由来・備考 |
| 宇野千代 | 薄桜忌 (はくおうき) |
6/10 | 老衰 肺炎 |
98 | こよなく愛し、保護活動にも奔走した岐阜県の天然記念物「淡墨桜」小説『薄墨の桜』に由来します。 |
| 尾崎士郎 | 瓢々忌 (ひょうひょうき) 士郎忌 |
2/19 | 直腸癌 | 66 | 代表作『人生劇場』の主人公・青成瓢吉(あおなり ひょうきち)の名にちなんで名付けられました。 |
| 梶井基次郎 | 檸檬忌 (れもんき) |
3/24 | 結核 | 31 | 不朽の名作『檸檬』にちなんで名付けられました。 |
| 芥川龍之介 | 河童忌 (かっぱき) |
7/24 | 服毒自殺 | 35 | 晩年の代表作『河童』や、生前好んで河童の絵を描いていたことに由来します。俳号から「我鬼忌(がきき)」とも呼ばれます。 |
| 今東光 | 東光忌 (とうこうき) |
9/19 | S字結腸がん肺炎 | 79 | 貫主(住職)を務めた岩手県平泉中尊寺や、お墓のある寛永寺などでも偲ばれています。正岡子規の命日(子規忌・糸瓜忌)と同日。 |
| 川端康成 | 康成忌 (やすなりき |
4/16 | ガス自殺 | 72 | 芥川龍之介とも親交が深く、梶井基次郎の才能を見出した川端康成の命日は、シンプルに本名から取って呼ばれています。春の愁いとともに、日本人初のノーベル文学賞作家を追悼する季語となっています。 |
| 萩原朔太郎 | 朔太郎忌 (さくたろうき) |
5/11 | 急性肺炎 | 55 | 前橋文学館を中心に、毎年5月の命日前後に「朔太郎忌」のイベントが大規模に開催されています。 |
| 林芙美子 | 芙美子忌 (ふみこき) |
6/28 | 心臓麻痺(心臓弁膜症) | 38 | 初夏のどんよりとした梅雨の季節、ひたむきに生き抜いた生涯を偲びます。 |
| 吉屋信子 | 信子忌 (のぶこき) |
7/11 | すい臓がん | 76 | 『花物語』などの少女小説で一世を風靡し、戦後は『徳川の夫人たち』などの大奥ブーム・歴史小説でも活躍した彼女を偲ぶ日として、俳句の夏の季語にもなっています。 |
文学忌一覧

有名どころを一気にご紹介いたします。
| 作家名 | 文学忌 | 命日 | 死因 | 享年 | 由来・備考 |
| 司馬遼太郎 | 菜の花忌 | 2/12 | 腹部大動脈瘤破裂 | 72 | 作品『菜の花の沖』や、黄色い菜の花をこよなく愛し、自宅の庭にも咲かせていたことに由来します。 |
| 徳冨蘆花 | 蘆花忌 (ろかき) みみずく忌 |
9/18 | 心臓麻痺 | 58 | 東京・世田谷の「蘆花恒春園」に暮らしたその名で偲びます。夜型の生活から「みみずく」とも呼ばれました。 |
| 室生犀星 | 杏子忌 (あんずき) |
3/26 | 肺がん | 72 | 金沢にある生家や、東京・大田区の自宅の庭に植えられ、とても大切にしていた「杏子(あんず)」の木にちなみます。 |
| 正岡子規 | 糸瓜忌 (へちまき) |
9/19 | 結核 | 34 | 絶筆となった3首の俳句(「糸瓜咲て痰のつまりし仏かな」など)に糸瓜を詠んだことから名付けられました。別名「獺祭忌(だっさいき)」。 |
| 永井荷風 | 偏奇館忌 (へんきかんき) |
4/30 | 胃潰瘍吐血による窒息 | 79 | 戦前まで麻布に構えていた風変わりな洋館の書斎「偏奇館(へんきかん)」に由来します。 |
| 太宰治 | 桜桃忌 (おうとうき) |
6/19 | 入水自殺(心中) | 38 | 晩年の短編小説『桜桃』に由来します。また、好物がサクランボ(桜桃)であったことや、遺体が発見された日が偶然にも彼の誕生日と同じであったことから定着しました。 |
| 宮沢賢治 | 賢治忌 (けんじき)イーハトーヴ忌 |
9/21 | 結核 | 37 | 理想郷「イーハトーヴ」から。「賢治の菜園」の秋の草花とともに偲ばれます。 |
| 江戸川乱歩 | 石榴忌 (ざくろき) |
7/28 | 脳出血 | 70 | 本格推理小説の短編『石榴(ざくろ)』にちなみ、ファンや怪奇幻想を愛する人々の間でこう呼ばれます。 |
| 中島敦 | 古譚忌 (こたんき) |
12/4 | 喘息 | 33 | 『山月記』などの名作を収めた第一創作集『光と風と夢』や、名作『文身』などが含まれる「古譚(こたん)」にちなみます。 |
| 尾崎紅葉 | 紅葉忌 (こうようき) |
1030 | 胃がん | 35 | 名前そのものでもありますが、代表作『金色夜叉』の熱海海岸の場面や、亡くなった美しい秋の紅葉の季節に重なります。 |
| 泉鏡花 | 鏡花忌 (きょうかき)秋葉忌 |
9/7 | 肺がん | 65 | 幻想文学の先駆者。お化けや怪異、そして「秋の木の葉」が舞うような妖艶な作品世界を象徴して秋葉忌とも呼ばれます。 |
| 小泉八雲 | 八雲忌(やくもき)ヘルン忌 | 9/26 | 心臓麻痺(狭心症) | 54 | 旧名のラフカディオ・ハーン(ヘルン先生)や、日本名の八雲から偲びます。 |
| 夏目漱石 | 漱石忌 (そうせきき) |
12/9 | 胃潰瘍(体内大出血) | 49 | 漢語の「漱石枕流(負け惜しみの強いこと)」から取ったペンネーム。文豪の代名詞として今も格調高く響く呼び方です。 |
| 森鴎外 | 鴎外忌 | 7/9 | 萎縮腎(腎不全)・結核 | 60 | 遺言「余ハ少年ノ時ヨリ點記(日記)ヲ物質的知識ノ足シトシテ…」に基づき、一切の栄誉を辞して「森林太郎」として眠る彼を、ペンネームで静かに追悼します。 |
| 樋口一葉 | 一葉忌 | 11/23 | 結核 | 24 | 24歳で夭折した天才女流作家。「一枚の葦の葉」という、貧しくも気高く生きたペンネームそのものが季語になりました。 |
| 志賀直哉 | 直哉忌 | 10/21 | 老衰 肺炎 |
88 | 「小説の神様」と称された白樺派の重鎮として、余計な飾りを排した文章のように、シンプルに本名で呼ばれます。 |
| 武者小路実篤 | 実篤忌 | 4/9 | 尿毒症 | 90 | 志賀直哉と共に白樺派を率い、「仲良きことは美しきかな」などの言葉を遺した彼の人柄を慕い、親しみやすく実篤忌と呼ばれます。 |
| 坂口安吾 | 安吾忌 (あんごき) |
2/17 | 脳出血 | 48 | 本名(炳五)ではなくペンネームから取られています。「安吾」という名は、学生時代に教師から「自己に暗い奴だからアンゴ(暗吾)と名乗れ」と黒板に書かれた逸話が由来です。 |
| 三島由紀夫 | 憂国忌 (ゆうこくき) |
11/25 | 割腹自殺 | 45 | 割腹自殺の10年前に発表された、軍人の自決を描いた自身の代表的な短編小説『憂国』に由来します。 |

