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「源氏物語」二帖:帚木(ははきぎ)あらすじ

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大河ドラマ『光る君へ』のなかで、ついにまひろが源氏物語をしたため始めます。

こちらでは、まひろの描いた「源氏物語」の内容・あらすじを一帖ずつご紹介します。

では二帖、帚木(ははきぎ)のご紹介です。

『光る君へ』をご覧の際のご参考に、また、「源氏物語」の大まかなあらすじを知りたい方にお役立ていただけましたら幸いです。

桐壷きりつぼ 帚木ははきぎ 空蝉うつせみ 夕顔ゆうがお 若紫わかむらさき 末摘花すえつむはな
紅葉賀もみじのが 花宴はなのえん あおい 10賢木さかき 11花散里はなちるさと 12須磨すま
13明石あかし 14澪標みおつくし 15蓬生よもぎう 16関屋せきや 17絵合えあわせ 18松風まつかぜ
19薄雲うすぐも 20朝顔あさがお 21少女おとめ 22玉鬘たまかずら 23初音はつね 24胡蝶こちょう
25ほたる 26常夏とこなつ 27篝火かがりび 28野分のわけ 29行幸みゆき 30藤袴ふじばかま
31真木柱まきばしら 32梅枝うめがえ 33藤裏葉ふじのうらば 34若菜上わかなじょう 35若菜下わかなげ 36柏木かしわぎ
37横笛よこぶえ 38鈴虫すずむし 39夕霧ゆうぎり 40御法みのり 41まぼろし 42匂宮におうみや
43紅梅こうばい 44竹河たけかわ 45橋姫はしひめ 46椎本しいがもと 47総角あげまき 48早蕨さわらび
49宿木やどりぎ 50東屋あずまや 51浮舟うきふね 52蜻蛉かげろう 53手習てならい 54夢浮橋ゆめのうきはし

 

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「源氏物語」二帖:帚木 ポイント

二帖「帚木」は、今後の源氏の人生を左右する重要な伏線が張られています。

ポイント1:雨夜の品定め

この場面は、「夕顔」巻に

「ありしあま夜のしなさだめの後いぶかしく思ほしなるしなじなあるに」

とあることから、『雨夜の品定め』(あまよのしなさだめ)と呼ばれる場面です。

『光る君へ』でもF4(藤原の4人組)が女性の品定めをする場面が出てきました。

ポイント2:頭中将の話は伏線

源氏の友達である頭中将が話した内縁の妻と娘は、後々物語に登場するキーパーソンとなります。この「帚木」は大いなる伏線となっています。

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「源氏物語」二帖:帚木 あらすじ(要約)

光源氏17歳の夏。

五月雨の夜、17歳になった光源氏のもとに、葵の上の兄であり良きライバルであった頭中将が訪ねてきました。

頭中将が源氏に贈られてきた恋文を見つけたことから、左馬頭(さまのかみ)と藤式部丞(とうしきぶのじょう)も加わり、4人で女性談義をすることになります。

1人め:左馬頭は、

妻として完全な女などない。
家を治めるのは国よりもむずかしい。
妻選びに苦労するのは好色からだけではない
真実な心の女が望ましい

といい、体験談として

嫉妬深い女が俺の指に食いつき、これに腹が立ち、かえりみなかった間に死んでしまった

嫉妬さえなければよい女であったのに惜しい

さらに

浮気な女には他に男がいて、それを見つけたので別れた

結論として

そのときどきに必要な良識や判断があって、
でしゃばらない謙遜している女がよい

と語ります。

2人め:頭中将は、

女性と付き合うなら「中の品」(中流)の女性が一番よい

と前置きし、子までもうけた内縁の妻の話をします。

その女は頭中将の正妻(弘徽殿女御の妹)の嫌がらせにあい、現在も行方がわからない
女児がいたため今も忘れられず、思い出すと悲しい

と語ります。

3人め:藤式部丞は、

博識の女に言い寄り、女が賢女ぶっていろいろ教えてくれたが、無学者の身では頭があがらず足も遠のき、たまたま女がニンニクを食べてくさかったときに訪ねて逃げ帰った

と話します。

頭中将が話したような中流階級の女性に興味を持つ源氏。

翌日、方違えのため紀伊守の別宅を訪れた源氏は「中流階級の女性」である空蝉(伊予介の後妻)のことを聞くと、かいま見て興味を持ちます。

そして深夜に部屋に忍び込み、強引に一夜を共にします。

その一夜以来、空蝉を忘れられなくなった源氏。

そこで源氏は、空蝉の弟・小君を近侍として自分の元で仕えさせることに。

源氏から文を託された小君は、空蝉に文を届けますが

お断り申し上げなさい。

と叱られます。
姉の返事を源氏に伝えると、(何故ここまでつれなくされるのか?)と自分になびかない空蝉を、『竹取物語』の「なよ竹(かぐや姫)」になぞらえる源氏でした。

源氏はふたたび中河の家に行きますが、空蝉は源氏をさけて会いません。

 

一帖 桐壷

三帖 空蝉

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「源氏物語」二帖:帚木 あらすじ(現代語訳)

出典:源氏相関図

より詳細に深く物語を理解するためのあらすじもご紹介します。
ほぼ現代語訳ですが、敬語表現についてその限りではなく、シンプルに整えています。

源氏の性分

光源氏だなんてすばらしい名で呼ばれていますが、口に出せない失敗も多く、好色な生活が後世に言い伝えられたり浮名を流す評判を恐れて…隠し事も語り伝えられるなど人はおしゃべりですから…
とはいえ源氏は世をはばかり真面目に振る舞っており、色っぽい面白い話もなく、好色小説の中の交野の少将などには笑われていたであろうと思われます。

源氏の君がまだ中将の頃は、内裏にばかりいて、葵の上のいる左大臣邸にはほとんど戻りませんでした。
色好みの在原業平のように他に女性がいるのではないか、と疑われることもありましたが、ありふれた露骨な色恋は好まないご性分でありました。
まれにあえて性分とは違った気をもむような恋愛を好む癖があるようで、あいにく良くないお振舞も時になさりました。

頭の中将の女性論

晴れ間がなく長雨が続くころ、帝の御物忌み(凶日などに身を慎んで家に籠ること)が続き、家に帰らず宿直の務めをしていた時には、源氏は左大臣邸にあまり帰らず(葵の上から)恨みがましく思われていましたが、衣服の類は贅沢な珍しいものを調達してくれており、左大臣の子息たちはただ源氏の宿直所での相手役を勤めていました。

帝の妹君腹の中将(頭の中将)とはとりわけ親しくしており、遊び戯れも気安く、なれなれしく振る舞っていました。
右大臣の邸では大事にされていたものの、この中将もあまり屋敷には帰っていない、好色の好き者でした。

中将の実家でも、自分の部屋は豪華にしつらえ、源氏の君の出入りする度に一緒につれだち、夜昼なく、学問も遊びもいつも行動をともにし、謙遜せず、どこへ行くにも一緒なので、おのずと遠慮もなくなり、心のうちに思うことも隠しあわず、仲よくなっていきました。

一日中しめやかに降リ続いた宵の雨、殿上にも人が少なくなり、宿直所ものどかな雰囲気がただよい、源氏は灯火をつけて書を読んでおられました。本棚から色とりどりの文を取り出して、頭の中将がしきりに見たがりましたので

「無難なものは少し見せてもいいよ。見苦しいのもあるだろうから」

と許可し、

「内心をさらけだしていたたまれない、と思うのこそいいんだよ。
平凡な文は、わたしのような取るに足らぬ者でも交して見ているんだから。
それぞれが恨みごとを言っていたり、夕暮れに来るのを心待ちにしていそうな文こそ拝見したいんだよね」

と恨み言をいうので、特に隠すべきものなどはこのような不用心な書棚に置き散らすべくもなく、奥に隠しているので、二番手くらいのものをお見せになりました。一部をすこしずつ読んでみた中将は、

「いろいろなものがあるなあ」と感じ入り、当てずっぽうに

「これはあの女性かな、それともあの女性なのかな」

など聞くものですが、言い当てるものもあれば、見当違いの人をそうではないかと疑うのも面白かったのですが、源氏は言葉少なにはぐらかして、手紙を隠しておしまいになりました。

「君こそ多くの文を集めただろう。少し見たいな。そうすればこの書棚をもっと開いて見せよう」

と源氏がおっしゃったところ

「お見せできる文などないよ」と言いながら、
「これぞと思える、欠点がない女など、なかなかいないものだとやっと気づいたんだ。
ただうわべだけの感情で走り書きしその時々の応答を心得ている人は身分によっては多いと思うのだけれど、本当にその巧みさを取り出して選ぶなら、必ず選ばれるものとは言い難いんだ。
自分の知っていることで得意になり人を見下すなど、笑ってしまうような女が多いんだ。

親などがつきっきりであがめて、将来がある箱入り娘なんかは、ただひとつの才能だけを伝え聞いただけで、心を動かすことはあるよ。
見た目がきれいでおおらかで、若々しく、他の用事で邪魔されないから、芸事も人をまねて一心にやれば、自然と一芸をものにすることもあるよね。

周りの人たちは欠点を隠して話さないし、ものになりそうな面をつくろって言い出すのだから、『そんなことないだろ』と推しはかることなんてできないし。
本当だろうと行ってみると、思ったほどでもないんだよなあ」

と中将の嘆息した様子が恥ずかしいくらい(かっこよく)で、源氏は全部ではないものの思い当たるふしもあったので、微笑み、

「そんな、なんの才能がない女なんているのか」

と、おっしゃれば

「いや、そんなひどい女の所に誰がだまされて行くもんか。
取柄もない残念な女と優れた女とは、数が等しくどちらもほとんどいないんだ。
身分が高く生まれれば、人にもかしずかれ欠点も隠れることが多く、自然にその人の雰囲気は良いものになるだろ。
中流の人は、それぞれの趣も見え、違いも人それぞれたくさんある。
下流の女は聞くまでもない」

と、何でもよく知っている様子なので、もっと聞きたくなり

「その階級は、どうだ。どう三つの格に分けるんだ。
元の家柄は高く生まれても、零落し位も低く人並みの生活ができていない人。
並の人が上達部かんだちめ(公卿)まで成り上がり、自信に満ちて家のなかを飾り、他の人に劣らないと思っている人。
その境はどう分けるべきだろう」

と問うていると、左馬頭さまのかみ藤式部丞とうしきぶのじょうが御物忌に籠るために参内してきました。

世に知れた好き者で弁が立つ人だったので、中将はさっそくこの品定めの論争に引き入みました。
不謹慎でお聞き苦しい内容も多いものでした。

左馬頭と藤式部丞

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